UNOSANO学園 プロローグ プロット
『UNOSANO学園』
Prologue 「 花(はな)筏(いかだ) 」
――春、出会いの季節。
朝の空気はまだ冷たく、透き通っているようで少しの水分を含んでいる。
さらさらと川の流れる音と、その水面をゆれる花筏(はないかだ)。
私、山野 峰子は桜流しを横目に豪華な校門をくぐるので
あった――。
【校門】
(それにしても、すごく大きな学校……)
???「――――お、来たな」
山野「へ?」
???「おはようさん」
山野「雪丸!」
彼は代田 雪丸。私の幼馴染だ。
お隣の家に住んでいて幼稚園からずっと一緒の学校、一緒のクラスで過ごしてきた。
だけど、高校だけは違った。
雪丸には特別な生徒しか入れない超名門校の「UNOSANO学園」から入学案内が届いて、そこへ通うことになった。私はもちろん平凡な女の子だったから、雪丸と同じ学校へは通えなかった。兄弟同然に過ごしてきた私は、雪丸のいない高校で少し寂しい一年を過ごした。
(――だけど)
雪丸「その制服……。本当に今日から山野さんもUNOSANO学園に入るんやな」
(そう。私は二年生になる今日からUNOSANO学園に通うことになったのだ)
山野「うん!急な話で驚いたけど……でも、また雪丸と一緒の学校に通えて嬉しい!」
雪丸「そやな」
雪丸「まぁこの学園は特殊やから慣れるまで大変やろうけど、しばらくは色々と聞いてくれればええから。これからはまた同じクラスやしな」
山野「!! また同じクラスなの?よかった!」
雪丸「そろそろ始業式が始まりそうや。移動しよか」
【体育館】
――ざわざわ
モブA「お!今回俺ら同じクラスじゃん!」
モブB「やったな!よろしく」
(わぁ。人がいっぱい……って、あれ??)
雪丸「ここが体育館。……もう生徒が並び始めてるな。俺らも早くクラスの列に並んだほうがええな」
山野「う、うん」
(あれ?幻覚?――生徒の頭に動物の耳が付いているように見える……)
山野「ねぇ、雪丸。この学園ではコスプレして始業式に出るの?」
雪丸「え?――いや別にそんな風習はないけど」
山野「でも生徒たち、みんな耳が……」
雪丸「?? 何言っとるん……?」
(もしかして、雪丸には見えてない!?)
山野「や、やっぱり何でもない!」
雪丸「ん。新しい学校で緊張しとるんやな」
(確かに緊張はしてきた……)
雪丸「そや。舞台に向かって左に集まってる生徒はネクタイやシャツの襟色が赤色やろ?」
山野「うん」
雪丸「あれが1年生。昨日入学してきて、2、3年と顔を合わせるのは今日が初めてやな」
山野「赤色が1年生……」
雪丸「そんで山野さんの制服や俺の制服見てわかると思うけど、2年生が緑色。舞台向かって右側に並ぶんやで」
山野「じゃあ3年生が真ん中の?」
雪丸「そう。舞台真正面に集まっとる青い襟色が3年生。とりあえず先輩と後輩の区別はつきそうか?」
山野「うん!ありがとう」
モブC「そういや今年の4U聞いたか?」
モブA「あぁ、聞いた聞いた!しかも4人のうち2人は1年生なんだろ?」
モブB「まじかよ……!こりゃもしかすると、
もしかするかもな!!」
モブC「いや今年の1年がどんだけ凄くても待ち構えてるのは“あの”2人だぜ?そう簡単にいかねぇよ」
モブA「確かにそうだなぁ……」
(随分と盛り上がってる……。何のことだろう?)
山野「ねぇ、雪丸。4Uって何?」
雪丸「あぁ、山野さんは知らんかったか。――うーん、そうだなぁ」
雪丸「毎年、UNOSANO学園では入学式に“4U”っていうこの学校のトップ集団を選ぶんだよ。全生徒からの投票でな」
山野「トップ集団?人気者の集まりってこと?」
(文化祭のミス・ミスターコンテストみたいなものかな?)
雪丸「まぁ、投票による結果だから人気者って表現しても問題はないかもしれんけど……。簡単に言うとこの学園に実権を掌握できる生徒ってことやな。うちの学園は生徒主体。すべての決定権は生徒にある。実際に学園を運営する4人のメンバーを請負人の意味を込めてアンダーテイカー(Undertaker)、略して “4U”って呼ぶんやで」
山野「権力をもった生徒会みたいなもの?」
雪丸「そう。4Uの中でも最も票の多かった生徒が生徒会長になるんや。――お?」
ざわざわ……。
教師A「それでは、時間になりましたので始業式を始めます。皆さん、静粛に。理事長のご挨拶です」
ぽいっ、べと!
(? 何の音?)
???「ガウガウ」
(!?)
壇上に現れたのは生徒の3倍は大きいホッキョクグマだった。
(??なんでこんなとこに?!)
舞台袖から投げられた魚がマイクの真下に落ちた。
巨大なホッキョクグマはのそのそと歩きながら魚の方へと登壇していく。
(え?えっ?何が起こってるの? あのホッキョクグマ、ネクタイ結んでる……)
暫くマイクにホッキョクグマの咀嚼音が入り、時々唸り声が聞こえる。音はただそれだけで体育館は静かな空間だった。あたりを見渡しても生徒は誰一人動じていないようだ。
(なんで誰も驚かないの?少なくとも新入生は驚くべきじゃない?)
教師A「理事長、ありがとうございました」
(いや理事長なのかいっ!!……ってあれ、あのホッキョクグマ、どこかで見た覚えが……)
その時、私は思い出した――。
山野「あの時の!!」
【2週間前】
【近所のスーパー】
山野「もう、ママったら。買い忘れたなら自分で行けばいいのに……。早く終わらせて帰ろ」
???「ガウガウッ! ガウ……ガゥ……」
山野「なんだかレジが騒がしいわ」
???「ガウガウ!」
山野「えっ!? クマ!?」
レジに並んでいたのは大きなホッキョクグマだった。
どうやらレジの支払いでトラブルがあったようだ。
(いや、支払いの以前の問題だよ……)
北極熊「ガウゥゥ……」
(なんて悲しそうな表情するの……。)
買い物かごにはしろくまアイスが二つ。財布は持っているようだが、どうやらお金の払い方がわからないようだった。
レジの人も腰が引けているし冷や汗が止ま
らない。
(でも……)
私は思わず横から声をかけた。
山野「あの、もしよければ私がお支払いを手伝いましょうか?」
北極熊「ガゥ……?」
(いやめっちゃ怖いな!?近い!デカい!……でも、すごく期待の眼差しをこちらに向けている気がする……)
山野「あの、すいません。これ二つでいくらですか?」
店員A「あっ、はい……275円です」
山野「お財布、借りますね。えぇと……これで!」
私はホッキョクグマの財布から300円を取り出し代わりに支払った。人間サイズの長財布から小銭を取り出すことは難しいだろう。
おつりも受け取り、しっかりと中に戻してホ
ッキョクグマへと返した。
山野「これで買えましたよ。全部溶けちゃう前に早く持って帰ってくださいね。誰かと食べるんでしょ?」
袋に入れて大きな手に掛けてあげれば北極熊はなんども嬉しそうにアイスを見た。
北極熊「がう」
(帰っていった……。なんだったんだ?)
それから帰宅した私は再び驚いた。
【自宅】
山野「ただいま~」
山野ママ「あら、峰子ちゃん。ちょっとリビングにいらっしゃい」
山野「え?はーい。……なに~?」
???「こんばんは」
リビングのソファには知らない男の子がいた。
パーカーのフードを被っていて不自然だな、と思う以外は至って普通の男の子だ。
山野「こ、こんばんは……。お母さん、お客さん?」
山野ママ「峰子ちゃんに用があるんだってよ?お友達じゃないの?」
山野「え?私?」
???「はい。山野峰子さん」
(この子、可愛い顔してる……)
山野「えっと、私に何か?」
???「はい。単刀直入に言いますと、あなたに編入案内をお届けに参りました」
山野「編入?」
???「現在は○○高校に通っていらっしゃるとか。今は春休みですか?」
山野「はい、そうですけど」
???「では、二年生からはうちの学園へご登校ください」
山野「えっ?」
(どういうこと?転校?)
???「UNOSANO学園は特別な生徒のみ入学できる名門校。今回は特例ということで理事長より直接お手紙頂いて参りました」
山野「UNOSANO学園って雪丸が通ってる“あの”」
???「はい。二週間後の始業式までに制服、教科書など一式をそろえてご自宅までお届けいたしますのでお受け取りお願いいたします。それでは、失礼します」
山野「えっ、ちょっと待ってください!」
――ガチャ、ばたん
山野「……行っちゃった」
それから両親はUNOSANO学園への編入をあっという間に終わらせてしまった。
こうして、私はこの学園へと通うことになったのだ。
【現在】
山野「つまりあの時のホッキョクグマが理事長で……助けたお礼ってこと~~!?」
雪丸「ちょっ、山野さん、どうしたん?」
山野「いや……理事長に驚いてしまって……」
雪丸「……あぁ、まぁ理事長の言葉は聞き取りずらいもんな。俺もまだ正確に聞き取れないから努力せな」
(いや聞き取れるとかそんなもんじゃないでしょ……)
ぼと、べちゃ
また舞台袖から肉が投げられた。
次は反対側の舞台袖だ。ホッキョクグマはそれに誘導されて降壇した。
(肉で誘導って……。もはや知能ないじゃん……ほぼペットじゃん)
雪丸「ほら、今から4Uのお披露目やで」
教師A「続いては生徒会長挨拶です。よろしくお願いいたします」
舞台袖から一人の男子生徒が出てきた。
マイクのそばまで足音も立てず、しなやかな動き。まるで猫のよう……。
(まぁヒョウ柄の尻尾あるし多分猫……)
雪丸「あれが生徒会長の蜜井 汰歌先輩。三年生で去年も生徒会長やっとった」
山野「去年も?」
雪丸「そ。つまり、2年連続投票率1位ってことや。まぁ1年の頃から4Uに選ばれとったらしいし」
山野「そうなんだ……」
◆主人公の心情選択
【まぁ、確かに豹って強そうだもんね】こちら
【確かにかっこいいね】
蜜井「全校生徒の諸君、おはよ
う。本日より、新学期がはじまる。勉学、部活動に励み、互いに切磋琢磨しながら成長できる一年にしよう。――さて、今年の行事に関して、実行委員となる4Uの紹介をする。まずは、昨日の入学式で選ばれた1年生の二人。前へ」
壇上に二人、生徒が出てくる。
赤色のネクタイをつけている二人はどちらもまだ少年さが残っていて初々しい。
(青い子、肩にインコのせてる……?それに、隣の子は……)
蜜井「それでは一人ずつ挨拶を。まずは紗鳥から」
紗鳥「紗鳥 駒です。今日から4Uとして風紀委員を任されることとなりました。よろしくお願いします!」
◆主人公の心情選択
【明るくて元気な子だな……】
【本当に女の子みたいに可愛い】こちら
白磁「は~い。えっと、今日から4Uの一員として頑張ります。あ、役職は理事長補佐です。よろしくね」
(あれ……?)
◆主人公の心情選択
【この子の声聞いたことがあるような……】こちら
【この子の顔見たことがあるような……】
山野「あ!」
雪丸「ん?どうした?」
山野「編入案内持ってきた子だ!」
雪丸「なんや?もう4Uと知り合いなん?」
山野「知り合いって言うか……。あの子がう
ちまで編入届持ってきたの。この学校の生徒だったんだね」
雪丸「あ~。あの子、苗字がポラリス・ベアーって言うとったやろ?理事長の孫やねん。だからかもしれんな」
(理事長の孫……?孫??……えっ?生徒の耳や尻尾はそういうことなの?)
蜜井「そして俺が、生徒会長の蜜井 汰歌です。去年と引き続きどうぞよろしく。――それと、メンバーのあと一人に関しては今日は欠席との知らせだ。紹介は後日とする。以上」
教師A「それではこれにて始業式を閉式いたします。生徒の皆さんはあらかじめ決められたクラスへと移動し、担当教師の案内の元ホームルームを行ってください」
雪丸「は~終わった。ほな、教室いこか」
山野「そうだね……。校舎も広いから迷わ
ないようにしなきゃ」
雪丸「しばらくは俺が案内するな」
山野「うん。よろしく」
移動している間も目の前の生徒から馬の耳が生えていたり、山羊の角が生えていたり……。もちろん、今日から私が通うクラスの生徒たちも何か動物の耳や尻尾があった。顔そのものが動物だったりする子もいる。
私は初めて見る光景をただ受け入れるしかなかった。
(特別な学校って、そういうことなのかな……?どうしよう、混乱してきた)
山野「ふぅ……。ちょっとお手洗い行ってくるね」
雪丸「わかった。迷わずに帰ってこいよ」
山野「わかってるって」
【廊下】
ジャー、キュッ。
山野「……私の頭には耳ついてないよね?」
(よし)
山野「さ、そろそろ教室に帰らなきゃ」
ドンッ
山野「きゃっ」
トイレから出た瞬間に誰かにぶつかってしまったようだ。
山野「す、すいません」
遠藤「……」
(身長高っ……!この人も犬耳がある)
(それにピアスもいっぱい……!不良さんだ……どうしよう、怖い)
遠藤「……怪我は?」
山野「へ?」
遠藤「……。平気そうだな」
(心配してくれたんだ……)
遠藤「次は気をつけろよ。……それじゃ」
遠藤「ふぁ~~ねみぃ……。どっかで昼寝すっか」(※フェードアウト+足音)
山野「は、はいっ!ありがとうございます……」
(行ってしまった……。あ、尻尾もあるんだ)
(やっぱり、誰とあっても動物の要素が少しずつ入ってる……)
(特別な生徒しか通えない超名門UNOSANO学園――。)
(もしかして私、とんでもない学校に転校してきちゃったのかもしれない……)
Tobecontinued